【ワンピース考察】王下七武海のモデル?現実の歴史にも存在した政府公認の海賊とは?

ワンピースには、王下七武海とはいう世界政府公認の海賊が登場します。

政府が海賊を公認してるなんて、さすがマンガ、と思いきや。
実は現実の歴史にも、「政府公認の海賊」は存在していました。
しかも、その影響力は国同士の戦争の勝敗を左右するほど。

ワンピースの話からは少し外れますが、今回はそんな「現実世界の政府公認の海賊」について調べてみました。

目次

政府公認の海賊=私掠船とは

現実の歴史に存在していた公認の海賊は「私掠船」と言います。
国王や政府が発布する「私掠免許」を取得して、敵国に対する攻撃や略奪を行う民間人の船がこう呼ばれていました。

私掠免許状
私掠免許状

こう聞くと王下七武海と同じような制度のように思えますが、大きく違うこともあります。
それは王下七武海のように、定員が決まっていないこと。
そのため、有力な海賊を選んで任命するというものではなく、「私掠免許」はかなりの数が発行されていました。
多い時には、各国の私掠船が何千隻という単位で暴れ回っていたようです。

当然、そんな数になると、政府としても統制が取れるわけがありません。
現実のこの時代は無線が発達しておらず、電伝虫のような便利なものも無いので、一度出港した船と連絡を取る手段もありませんでしたしね。


そのため、私掠船であっても、味方の国の港や船を襲うものもかなりいたようです。
王下七武海のハンコックが率いる九蛇海賊団は、海賊だけでなく商船も襲っていますが、そんな感じですね。

政府はなぜ海賊を公認したのか?

王下七武海という制度の目的は、海賊に海賊を襲わせることで、海賊を抑えるためでした。
しかし、現実世界では先ほど書いたように、統制の取れない私掠船により、むしろ海賊を増やす元凶にさえなっていました。
それでは、なぜ政府は私掠免許を発行し、海賊を公認していたのでしょうか?

それはずばり、「敵国への攻撃のため」です。
王下七武海に許可されているのは、「海賊または未開地域に対する海賊行為」でしたね。
私掠船に許可されていたのは、「政府が指定する敵国への海賊行為」なのです。
(先程書いた通り、守らない私掠船もたくさんいましたが)

歴史上で一番有名なのは、イギリスがスペインに攻撃するために許可した私掠船です。
その当時、イギリスは小さな島国でしかなく、対してスペインは南北アメリカ大陸など、世界中に植民地を持ち、「太陽の沈まない国」と呼ばれる大国でした。

最盛期のスペインの領土
最盛期のスペインの領土

そのため、国の海軍の強さには大きな差があり、真正面から戦ってもイギリスには勝ち目がありません。
そこで、イギリスは「民間人を使ってスペインに攻撃する」ことを思いつきます。
民間人にスペインに対して海賊させ、そこから一部を上納させれば、スペインに損害を与えながらイギリスは利益をあげられます。
しかも、民間人に免許を発行するだけなので、もし返り討ちにあって被害が出ても、国の海軍は痛くも痒くもありません。

こうして大量の私掠船の攻撃を受けるようになったスペインは、最終的に没落してしまい、「太陽の沈まない国」はイギリスに取って代わられることになりました。

代表的な現実世界の公認海賊たち

このように、王下七武海と違って大量に存在した公認の海賊たちですが、そんな中でも特に有名な海賊というのは存在します。
そんな代表的な私掠船の船長たちを紹介しましょう。

フレンシス・ドレイク

おそらく、現実世界での世界一の大海賊でしょう。

従兄弟のジョン・ホーキンスの下で船乗りとなり、やがて船長となりましたが、スペインの海軍に攻撃されホーキンスの船団は壊滅。
このことから、スペインに対して復讐心を持つようになります。

その後、イギリスのエリザベス女王などからの出資を集め、5隻の艦隊を作って出港。
世界中のスペインの植民地や船を襲いながら世界で二番目の世界一周を成し遂げて帰還します。

ちなみに、世界初の世界一周はスペインのフェルディナンド・マゼランの艦隊ですが、マゼラン自身は航海中に死亡しているので、生きて世界一周をした船長はドレイクが世界初です。
この辺りは、ロジャーのモデルになっているようにも思えます。

しかも、ドレイクはただ世界を一周しただけでなく、莫大な利益をもたらしました。
この時にイギリスに献上された財宝は、なんと当時のイギリスの国家予算の1.5倍以上!
この臨時収入で、イギリスは溜まっていた借金を完済できたばかりか、後にイギリス東インド会社となる国営企業の基礎を固めることができました。
ドレイクはこの功績で、イギリス海軍の中将に任命され、騎士として叙勲されました。

その後、アメリカ大陸のスペインの植民地を荒らし回ったり、スペイン本国の重要な港であるカディスという街を一時占領したりと大暴れ。
最終的には「アルマダの海戦」というイギリスとスペインの決戦で、イギリス艦隊の副司令官として実質的な指揮を取り、「無敵艦隊(アルマダ)」と呼ばれたスペイン艦隊を壊滅させます。

その後もアメリカ大陸でスペインを相手に活動を続け、55歳で病死しました。

ちなみに、X・ドレークの名前の元ネタだそうです。

ウィリアム・キッド

かの有名な『キャプテン・キッド』です。
スコットランド出身で、当時イギリス領だったアメリカに渡ってカリブ海で船長になったようです。
アメリカ植民地を襲うフランスの船を拿捕してニューヨーク市議会から表彰されるなど、アメリカでは有名な人物でした。

この当時、世界中に領土を広げていたイギリスは、海賊に悩まされる側になっていました。
その上、世界中で紛争を抱えているような状態で、国の海軍は海賊退治をしている暇がありません。

そこで、私掠船に海賊退治をさせることとなりました。
キッドはイギリス貴族の支援で船を手に入れ、海賊に対する海賊行為と、その当時対立していたフランスの船への攻撃の許可を得て航海に出ます。
目指したのは、当時海賊の巣窟となっていたマダガスカル島。

しかし、キッドがマダガスカル島についた時、海賊達は略奪に出かけており、キッドは目的を果たすことができませんでした。
そこでキッドはどうしたか。
なんと、正真正銘の海賊になってしまいました。
フランスだけでなく、イギリスやオランダの船にも襲いかかり、略奪を働いたのです。

インド洋で海賊として暴れたキッドは、最終的に部下に裏切られて捕らえられ、ロンドンで処刑されました。

ちなみに、ユースタス・キッドの名前の元ネタだそうです。

ジャン・バール

フランスのダンケルク出身の私掠船船長で、後にフランス海軍の軍人となり、フランス国王ルイ14世によって貴族に叙せられました。
フランスでは海の英雄として有名で、フランス海軍には代々ジャン・バールの名前を受け継ぐ艦艇が存在するほどです。

ダンケルクはジョン・バールの生まれる少し前まではスペイン領で、街をあげてオランダに対する私掠船を支援していました。
ジョン・バールの父、父方の祖父、父方の叔父、母方の曾祖父、母方の大叔父、みんなオランダと戦ったスペインの私掠船乗りとして、名前が残っているほどです。

フランス領となったダンケルクで私掠船の船長となったジョン・バールは、オランダ相手に武勲を重ね、フランス海軍にスカウトされます。
当時はオランダは海軍大国で、一方のフランスは海軍後進国だったため、海でオランダに勝てる人材は貴重だったのです。

その後、貴族出身の士官による妨害に悩まされながらも武勲を重ねたジョン・バールは貴族に叙せられ、飢饉で200万人もの餓死者を出したフランスが中立国から緊急輸入しようとした穀物の輸送船100隻がオランダに拿捕された際、それを奪還する作戦に成功し、国民的な英雄となりました。

ちなみに、ハート海賊団のジャンバールの名前の元ネタだそうです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

現実の歴史でも、国王公認の海賊というのは存在し、時には国の行方を左右するほどの大暴れをしていました。
ワンピースという作品は、こんな歴史を元にして作られていたんですね。

これを機に、歴史にも興味を持ってもらえたら、歴オタでもある筆者としては嬉しいです。

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